★断食に目覚めて予防医学の道へ★  証券マンから転身して、鍼灸師をめざして専門学校で学んでいる 内田智康さん(35)は、これまで三度にわたって断食を実賎し、その体験を もとに断食療法を中心にした医療問題を語り合うインターネット上の交流会を 主宰している。  二十歳で胃潰瘍を患ったり、会社員時代も不養生で「身体がいつも重くて、 電車の中などで異様に汗をかく」などの身体の変調が気になっていた 内田さんが、伊豆健康センターの断食を体験したのは平成八年六月。 「これですこぶる体調がよくなったので、毎年一回は断食しようと心に決めた」 という。  二回目が翌年一月、小淵沢にある健康施設で。そして、三回目は昨年三月、 二日半断食を自宅で敢行した。  断食の効用か、「世の中に役立つ仕事をしたい」と思うようにもなった。 証券会社に勤めていたが、相次ぐ背任事件に嫌気もさしていた。そして、 会社の倒産をきっかけに、以前から興味があった鍼灸師の勉強を本格的に 始めることにしたという。  こうした経験をもとに内田さんがインターネット上に開設したのが 健康談義メーリングリスト「Be Well」。中心メンバーの三分の二以上は 断食経験者で、活発な健康論議を続けている。  これとは別に昨年五月には、鍼灸師や医師、薬剤師、柔道整復師、 マッサージ・指圧師などをめざしている人々のネットワークとして 「代替医療」学生交流会メーリングリストも立ち上げ、現在は43人の メンバーで意見交換をしている。  「断食を体験する前には、自分が医療にかかわる仕事をめざすなんて 思いもよらなかった。でも、東洋医学や民間療法を学んでいけばいくほど、 現代医療の歪んだ面が見えてくるんです。断食も含めて、予防医学の大切さを もっと多くの人に知ってもらいたい」  内田さんのように断食に目覚めて、新たな人生を歩みだす人も少なくない。 短期間で心身ともに変貌させる力を、断食療法は確かにもっているようだ。 ひらの・かつみ一九五四年、岡山県生まれ。 早稲田大学政経学部卒業。新聞記者を経て、89年からノンフィクションライター。 著書に『輪廻する赤ちやん』(人文書院)、『夢みる教育』(清流出版)、 『未知科学の扉をひらく』(河出夢新書)、 本連載をまとめた『心を癒す体を治す』(PHP研究所)などがある。 以上